86歳のフィギュアスケート選手だと話すと、周囲の人は一瞬固まって私を凝視する。「本当に滑るの? ジャンプもするの? レオタードを着て演技するの?」と質問攻めに遭うが、答えはもちろん「イエス」だ。人々をさらに驚かせるのは、私が約60年間氷上から離れた後、78歳でこの競技に復帰したということである。

幼い頃から、陸上競技や乗馬など、体を動かして挑戦することが大好きだった。そのなかでも私のアスリート精神を魅了したのがフィギュアスケートで、10代から20代前半にかけて世界中で競技会に出場していた。しかし、24歳を迎えて間もなく、筋肉の筋力が低下する難病の自己免疫疾患「重症筋無力症(じゅうしょうきんむりゃくしょう)」と診断され、すべてが一変したのだ。

ジャンプやスピンどころか、腕を上げることすらできなくなり、スケートを滑る体力を完全に失った。重症筋無力症に根本的な治療法はないが、症状が落ち着く「寛解(かんかい)」を目指すことは可能だった。医師からは服薬と安静を勧められ、ハードな運動から離れるよう指示されたため、私はスケート靴を脱ぐしかなかった。胸が引き裂かれる思いだったのを覚えている。

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約60年ぶりの氷上復帰!78歳で訪れた人生の転機

それからの数十年、スケートが恋しい気持ちを抱えつつも、ウォーキングやジョギング、スキーなど、無理のない範囲で身体を動かし続けた。年齢を重ねても筋力やバランス感覚を維持できるよう、パーソナルトレーナーの指導も長年受けていた。

転機が訪れたのは78歳のときだ。引っ越しを機に新しい主治医の診察を受けた際、思いがけない言葉をかけられた。「病気は寛解状態にあり、体内で活性化していません」と告げられたのだ。ショックを受けると同時に、大きな喜びと安堵が押し寄せた。

すぐに「氷の上に戻りたい」という想いが溢れ出した。フィギュアスケートは、私が最も自由で自信を感じられる場所だったからだ。安全に復帰できるよう地元のコーチを探し、週に2〜3回のレッスンを開始した。最初は、氷上でのバランス感覚やエッジワーク(ブレードを滑らかに傾けて滑る技術)など、基礎の再構築から始めた。

55年以上のブランクがあったにもかかわらず、筋肉の記憶(マッスルメモリー)によって技術や感覚が驚くほど戻ってきたのには感動した。練習を重ねるごとにバランスが向上し、痛みや筋力低下を感じることなく、自信を取り戻していった。復帰してわずか1ヶ月ほどで、ジャンプやスピンも再びできるようになったのだ。

86歳の日常:週5日のトレーニングルーティン

86歳になった現在、私はスケート、有酸素運動、筋力トレーニングを組み合わせて週5日のペースでトレーニングを続けている。目標は「楽しみながら、強く、安全でいること」だ。

スケートの練習前には、股関節まわしや足首の回転、レッグスイングなどの動的ストレッチ(モビリティ運動)で関節をほぐす。続いてスクワットジャンプなどのプライオメトリクス(筋肉の瞬発力を高める跳躍エクササイズ)を行い、リンクの外周を数周ジョギングして血流を高めてから氷に上がる。

リンク上では技術の磨き込みに集中する。エッジワークに特化する日もあれば、高度なジャンプやスピンに取り組む日もある。無理に技を成功させようとするのではなく、強固な基礎を築くことが大切だと学んだ。もし違和感があれば無理をせず、基本の姿勢や動きを小さく分解して見直すようにしている。

氷外のトレーニングも欠かさない。有酸素持久力を維持するため、週に3〜4日はトレッドミルでインターバルランニング(1分間走り、2分間歩くセットを4〜5ラウンド)を行っている。さらに、アンクルウェイト(足首用重り)を装着してのカーフレイズ(かかと上げ)や、つま先立ちでの前後歩行など、下半身と足首の補強トレーニングを毎日実施している。これが氷上での安定感につながっているのだ。

年齢に縛られない!健やかに人生を楽しむ3つの心得

私が86歳でアスリートとして挑戦を続けられている背景には、3つの大切なマインドセットがある。

1. 自分の可能性を信じてくれる指導者を選ぶ

年齢を理由に限界を決めつけず、安全を優先しながらも挑戦させてくれるコーチの存在が不可欠だ。私の可能性を見てくれるチームのおかげで、再び自信を持つことができた。

2. 自分の身体の声に耳を傾ける

毎日の調子を意識し、調子が良い日はジャンプに挑戦し、違和感がある日は基本に戻る。過去のパフォーマンスと比較せず、今の身体ができることに感謝し、一貫性を保つことが長期的な健康につながるはずだ。

3. 年齢を理由に諦めない

「86歳でスケートなんて信じられない」と言われることもあるが、年齢という数字は関係ない。若い頃のように高く跳べなくても、今できる限界に挑戦することが生き甲斐となっている。

歳を重ねることは、好きなことを諦める理由にはならない。あなたも、自分をときめかせる活動を今からでも始めてみよう。

※この記事はアメリカ版ウィメンズヘルスの翻訳をもとに、ウィメンズヘルス日本版が編集して掲載しています。