過去数十年間にわたり、科学者たちは認知症の本当の原因を少しずつ解き明かし、より良い治療法や予防法を見つけようと熱心に研究を続けてきた。現在では、質の高い睡眠、十分な運動、そしてアルコールの摂取を控えることが極めて重要であることはよく知られている。しかし、依然として多くのリスク要因が謎に包まれたままだ。

そんな中、最近になって科学者たちが驚くべき新たなリスク要因を発見した。それは、おそらくあなたが全く予想していなかったものかもしれない。

認知症のリスクは「住む場所」で変わる?

米国神経学会が発行する医学誌『Neurology』に掲載された研究によると、実は「どこに住んでいるか」が、認知症の発症確率に影響を与える可能性があるという。そう、私たちの住む地域環境は、これまで考えられていた以上に病気のリスクと深く関わっているのだ。

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とはいえ、ほとんどの人にとって「今すぐ環境の良いところに引っ越す」というのは現実的な選択肢ではないはず。では、私たちはこの事実にどう向き合えばいいのだろうか?神経学の専門家たちが、この研究結果の意味と、私たちの生活への活かし方を分かりやすく解説してくれた。

恵まれない環境がリスクを2倍に引き上げる

この研究では、アメリカのシカゴにある4つの異なるコミュニティに住む、平均年齢72歳の6,781人のデータを分析している。参加者は研究開始時に思考力や記憶力のテストを受け、その後少なくとも6年間にわたり、3年ごとに同じテストを受けた。また、その間に2,534人が認知症の評価を受けている。

研究チームはこれらの情報を米国の国勢調査のデータと照らし合わせ、それぞれの地域が社会的にどれだけ「恵まれていないか(不利益を被っているか)」を調べた。

研究の終了時、最も恵まれた地域に住んでいた人々のうち、アルツハイマー病を発症したのは11%だったのに対し、最も恵まれない地域に住んでいた人々では22%にのぼった。これら2つの地域の中間に位置するエリアでは、社会的に恵まれない度合いが高くなるにつれて、発症率も上昇していたのだ。

年齢、性別、教育レベルといった認知症リスクに影響を与える他のさまざまな要因を調整した後でも、最も恵まれない地域に住む人々は、より環境の良い地域に住む人々に比べて、認知症を発症する可能性が2倍以上高いことが判明した。

なぜ住む場所が脳の健康に影響するのか

ここで重要なのは、この研究があくまで「住む場所」と「高い認知症リスク」との間に「関連性」があることを見出したに過ぎない、という点だ。つまり、特定の地域に住むことが直接的に認知症を引き起こすことを証明したわけではなく、両者に結びつきがあるということを示している。しかし、「郵便番号(住む場所)は、総合的な健康状態を決定づける大きな要因になります」と語るのは、ミシガン州立大学神経学部のメディカルディレクターであるアミット・サチデフ医師だ。これは特に「健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health)」と呼ばれるものに該当する。これは、個人の健康や幸福に影響を与える、医療以外の社会的・環境的な要因のことだ。日本でも、住環境や地域コミュニティとの繋がりが健康に与える影響が注目されている。カリフォルニア州サンタモニカにあるプロビデンス・セントジョンズ・ヘルスセンターの神経科医、クリフォード・セギル医師(DO)は、「恵まれない地域に住む人々は、糖尿病、心疾患、高血圧などの疾患を発症するリスクが高くなる傾向があり、これらは認知症のリスク要因でもあるのです」と指摘する。

遺伝以外で気をつけるべき認知症リスクとは

認知症のリスク要因には、いくつか心に留めておくべきものがある。遺伝や年齢、人種など、自分ではコントロールできない要因もある一方で、認知症のリスクを高める生活習慣もあるのだ。米国国立老化研究所(NIA)によると、次のようなものが挙げられている。

  • 高血圧
  • 運動不足
  • コントロール不良の糖尿病
  • 過体重または肥満
  • 社会的な孤立や孤独感

ただし、特定の行動や生活習慣を避ければ認知症を完全に予防できると証明されているわけではない点も、同研究所は付け加えている。

脳を守るために私たちができること

脳の健康をサポートする最善の方法は、全体的な健康に意識を向けることだとサチデフ医師は言う。「非常に健康な脳は、通常、非常に健康な身体によって支えられています。身体が健康であれば、そうでない場合と比べて、様々な変化に対しても脳が力強く耐えることができるはずです」

セギル医師は、脳の健康には生活の「構造化」も重要だと語る。「心と身体の両方を刺激するような活動を見つけてみましょう。そして、それを毎週の定期的なルーティンに組み込んでみてください」

認知症の発症リスクに関して医師たちが共通して同意しているのは、「健康でいるために、今の自分にできることを無理なく続けるべき」ということだ。日常のちょっとした習慣を見直し、心身ともに健やかな毎日を送ろう!

専門家の紹介:

  • クリフォード・セギル(Clifford Segil, DO):カリフォルニア州サンタモニカ、プロビデンス・セントジョンズ・ヘルスセンターの神経科医
  • アミット・サチデフ(Amit Sachdev, MD, MS):ミシガン州立大学 神経学部 メディカルディレクター

※この記事はアメリカ版ウィメンズヘルスの翻訳をもとに、ウィメンズヘルス日本版が編集して掲載しています。