「なんか最近、疲れやすくなった気がする」「肌のくすみが気になる」「代謝が落ちてきた」そんな悩み、実はミトコンドリアと深く関係しているみたい。
細胞のなかにいる小さな存在、ミトコンドリア。最近の研究では、その数や元気さが疲れやすさ・代謝・肌の若々しさ・さらには健康寿命にまで関わっていることがわかってきたんだとか。
「でも、どうやって増やすの?」という疑問に答えるべく、科学的な根拠をもとに運動・食事・習慣・温度刺激など、できることを総まとめ。エディターが実際に2週間チャレンジした体験記もあわせてお届け。
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専門家の紹介:鈴木鑑先生。泌尿器科専門医として大学病院や総合病院、クリニックで幅広い診療経験を持つ。分子栄養学や再生医療の知見を取り入れ、一人ひとりに合わせたウェルネス医療を実践している。
ミトコンドリアってなに?
ミトコンドリアの定義:ミトコンドリアの生物学的な定義は、真核生物(動物、植物、菌類など)の細胞内に存在する、二重の生体膜に包まれた細胞小器官(オルガネラ)の一つ。機能面から定義すると、酸素を用いて細胞内呼吸(好気呼吸)を行い、生命活動に必要なエネルギー(ATP)を産生する器官だ。
簡単に言うと、ミトコンドリアとは、全身のほぼすべての細胞に住んでいる「エネルギーを作る工場」みたいな存在。体が動くために必要なエネルギーの素、「ATP(アデノシン三リン酸)」を作り出してくれている。(*1)
ひとつの細胞のなかに数百〜数千個もいて、心臓や筋肉など、たくさんエネルギーを使うところほど密集しているんだそう。もともとは独自のDNAを持つ独立した生きものだったという説もあり、ちょっとミステリアスな存在でもある。
なぜ増やすといいの? ミトコンドリアを増やす5大メリット
注目したいのが、ミトコンドリアは“生活習慣によって増やしたり、質を上げたりすることができる”という点。この事実はまざまな研究で明らかになっている。
つまり、やり方次第でちゃんと育てられるということ。
そしてミトコンドリアが増えて元気になると、体にはこんないいことが起きるみたい。根拠とあわせて見ていこう。
<メリット①> 慢性的な疲れが取れやすくなる
ミトコンドリアが増えると、細胞レベルでエネルギーを作る力がアップ。「動くとすぐ疲れる」「寝ても疲れが残る」という慢性的なだるさの原因のひとつが、ミトコンドリアの元気のなさとされているんだそう。
2017年に『PLoS ONE』に掲載された研究(Tomas et al.)では、慢性疲労症候群の患者さんにおいてミトコンドリアのエネルギー産生機能が低下していることが報告されているみたい。(*13)
エネルギーの生産ラインを整えることが、疲れにくい体づくりの近道になるんだって。
<メリット②> 代謝が上がり、ダイエットをサポート
ミトコンドリアは脂肪を燃やしてエネルギーに変える“脂質代謝”の主役。数と質が上がると、じっとしていても脂肪を燃やしやすい体質に近づくらしい。
九州大学のマウスを用いた研究では、ミトコンドリアに存在するTFAM(転写因子A)というタンパク質を活性化させることで、脂肪を燃焼する褐色脂肪細胞が自律的に活性化することが明らかになっており、人のダイエットサポートへの応用も期待されているんだとか (*8)(2022年、iScience誌掲載)。
<メリット③> 肌のハリや若々しさを保つ可能性
肌の細胞(線維芽細胞)もミトコンドリアをたくさん持っていて、ハリの元となるコラーゲンを作るのに必要なエネルギーを供給している。ミトコンドリアの元気がなくなると活性酸素(かっせいさんそ=細胞を傷つける物質)が増えて、肌の老化が進みやすくなるんだとか。
厚生労働省e-ヘルスネットでも「活性酸素はがん・老化・免疫機能の低下などを引き起こす」と明記されていて、抗酸化ケアの重要性が強調されているみたい。(*2)ミトコンドリアを元気に保つことが、そのまま肌の若々しさにもつながるのだ。
<メリット④> 脳がクリアになり、集中力・気分がアップ
脳はエネルギー消費が特に多い臓器なので、ニューロン1個あたりのミトコンドリア数も多いそう。そのため、ミトコンドリアが元気だと神経の伝達物質(ドーパミンやセロトニンなど)がスムーズに作られるように。集中力が上がったり、気分が安定したりする効果が期待できるんだそう。
近年は「ミトコンドリアの機能低下がうつや認知機能の低下と関係している」という研究も増えてきており、脳の健康のカギもミトコンドリアにあるのではと言われ始めている。
<メリット⑤> 健康寿命が延びる可能性
老化の原因のひとつとして「ミトコンドリアの機能不全」が挙げられるようになってきた。ミトコンドリアが正常に働くほど細胞が長持ちし、糖尿病や心臓病などの生活習慣病リスクが下がるという研究が複数あるそう。
スイス連邦工科大学のMouchiroud先生らの研究(Cell誌, 2013)では、NAD+(エネルギー産生を支える補酵素)を補充してミトコンドリアを元気にすることで寿命が延びるという結果も報告されている。老化をゆるやかにするカギとして、世界中で注目されているみたい。(*14)
ミトコンドリアを増やす方法は?
ミトコンドリアを増やすうえでカギとなるのが「PGC-1α(ピージーシーワンアルファ)」というタンパク質。これがスイッチとなり、ミトコンドリアを新しく作る指令が出るのだそう。運動・食事・生活習慣・温度刺激など、さまざまなアプローチでこのスイッチを押せるみたいなので、できそうなものから試してみて。
▶運動編
① インターバルウォーキング(速歩+ゆっくり歩きを交互に)
「息が上がる程度の速歩3分+ゆっくり歩き3分」を繰り返す「インターバル速歩」。信州大学の能勢博特任教授が考案した運動法で、約10,000名のデータをもとにしたこの研究は、5ヶ月間継続すると体力が平均15%向上し、生活習慣病の症状が20%改善することが確認されているそう。(*6.7)
有酸素(ゆっくり)と無酸素(きつめ)の刺激を交互に与えることで、ミトコンドリアを増やすスイッチが効率よく入るのだ。
目安:週4〜5回、1日セット(30分)
道具いらずで今日から始められる
② HIT(高強度インターバルトレーニング)
「20秒全力で動いて10秒休む」を8セット繰り返す、あのタバタ式トレーニングもこれ。短時間でかなり強い負荷をかけることで、ミトコンドリアを増やすスイッチ(PGC-1α)がより強力に入るとされているんだそう。
Mayo Clinic の Robinson MM らの研究では、12週間のHIITが若年・高齢者ともに骨格筋のミトコンドリアタンパク質を増加させ、特に高齢者で顕著な効果が示されているんだそう。(*15)
目安:週2〜3回、1回4〜20分
短時間で効果が高いけど、ハードなので無理しすぎないこと
※ 心疾患や関節への負担が気になる人は医師に相談を。
③ 筋力トレーニング(特に大筋群を使う種目)
スクワットやランジなど、太ももやお尻など大きな筋肉を使う動きは、筋肉の細胞のなかにあるミトコンドリアを増やす効果が高いのだそう。筋肉が増えると同時にミトコンドリアも増えるので、代謝アップが一石二鳥で狙えるということ。
上記 Robinson らの研究では、レジスタンストレーニングもHIITと組み合わせることで代謝・筋量の両方を改善することが示されているんだとか。(*15)
目安:週2〜3回
スクワット・ランジ・腕立て伏せから気軽に始めてOK
④ 長時間の低強度有酸素運動(LSDトレーニング)
ゆったりしたペースで60〜90分以上続けるジョギングやサイクリングは、脂肪をエネルギー源として使いやすくする「脂質酸化(ししつさんか)能力」を高めてくれるんだそう。厚生労働省のe-ヘルスネットでも「運動強度が65%VO2maxのときに筋における脂肪酸の分解が最大になる」という研究データが紹介されているみたい。(*1)
週末のロングウォークやのんびりサイクリングとして取り入れてみるのもいいかも。
▶食事編
① ビタミンB群を積極的に摂る
ビタミンB1・B2・B3(ナイアシン)・B6などは、ミトコンドリア内でのエネルギー代謝に欠かせない補酵素。不足するとエネルギーがうまく作れなくなり、疲れやすくなる。
豚肉、玄米、納豆、まぐろ、さんま、レバーなどに豊富
特にB2(リボフラビン)はミトコンドリアの電子伝達系に直接関わる大事な栄養素
② 抗酸化食品で「ミトコンドリアを守る」
ミトコンドリアはエネルギーを作るとき、副産物として活性酸素を発生させてしまうのだとか。これが増えすぎると自分自身を傷つけてしまうので、抗酸化物質(活性酸素を中和してくれる成分)をしっかり摂ることが大切。
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、ビタミンA・C・E(抗酸化ビタミンACE)が「酵素によって処理しきれない活性酸素の働きを抑える」として紹介されている。(*2)
ポリフェノール:ブルーベリー、赤ワイン(適量)、ダークチョコレート、緑茶
ビタミンC:パプリカ、ブロッコリー、キウイ
ビタミンE:アーモンド、アボカド、オリーブオイル
βカロテン:かぼちゃ、にんじん、ほうれん草
③ コエンザイムQ10(CoQ10)を含む食品
CoQ10はミトコンドリアのなかでエネルギー産生に直接関わっている重要な物質。体内でも作られるけれど、加齢とともに減っていくのだそう。食事でも意識して補えると◎。
多く含む食品:牛肉・豚肉・鶏肉(特にハツ・レバー)、さば、いわし
植物性:ブロッコリー、ほうれん草、大豆
④ タンパク質をしっかり摂る
ミトコンドリアを作るのにもアミノ酸(タンパク質の素)が必要なのだそう。体重(kg)×1.2〜1.6gを1日の目安に、毎食バランスよく食べることが基本。
卵・魚・肉・大豆製品・乳製品をローテーションしながら
⑤ 緑茶・コーヒー(カフェイン+ポリフェノール)
カフェインがAMPK(エーエムピーケー)というエネルギーセンサーを活性化して、ミトコンドリアを増やすスイッチを押してくれるとされている。また、緑茶に含まれるEGCG(カテキンの一種)もミトコンドリアに働きかけるという報告がある。
1日2〜3杯を目安に
▶習慣編
① 16:8プチ断食(インターミッテントファスティング)
16時間ほど食べない時間を作る「プチ断食」は、体のエネルギーの使い方を切り替える方法として注目されている。
食べない時間が続くと、体は糖だけでなく脂肪をエネルギーとして使いやすい状態に。さらに近年の研究では、断食やカロリー制限が、古くなったミトコンドリアの整理や、ミトコンドリア同士のつながり方の調整にも関わる可能性があると報告されているそう。(*11.12.22)
つまり、プチ断食は単に「食べる量を減らす」だけでなく、細胞の中のエネルギー工場をメンテナンスする習慣としても研究されているということ。
ただし、ヒトで「16時間断食をすればミトコンドリアが必ず増える」と証明されたわけではない。無理に長時間空腹を我慢するより、まずは夜遅い食事や間食を減らすところから始めるのが現実的みたい。
例:夜20時以降は食べず、翌日12時まで断食
水・ブラックコーヒー・緑茶はOK
※ 妊娠中・授乳中・成長期・低体重の方、糖尿病治療薬を使っている方、摂食障害の経験がある方、持病がある方は、自己判断で行わず医師に相談を。
② 質の高い睡眠を確保する
睡眠中はミトコンドリアの修復・再生が活発に行われるそう。そのため、慢性的な睡眠不足はミトコンドリア機能を著しく低下させ、疲労の蓄積・代謝の悪化につながるのだ。
厚生労働省『健康づくりのための睡眠ガイド2023』では、「睡眠は健康増進・維持に不可欠な休養活動であり、睡眠が悪化することで疾患の発症リスクが高まる」と明記されている。(*3.4)
7〜8時間の睡眠を目指す
就寝前のスマホ・ブルーライトを避け、室温を18〜22℃に
朝の光を浴びて体内時計をリセット
③ 座りっぱなしを避ける(NEAT向上)
デスクワーク中心の生活でも、1時間ごとに立ち上がって軽く動くだけで「NEAT(日常の動きで燃やすエネルギー)」が増えるのだそう。ミトコンドリアへの刺激が日常的に続くことで、元気な状態が保たれるんだって。
スタンディングデスクの活用、階段を使う、電話中は立つなど
▶温度刺激編
① コールドシャワー(冷水浴)
冷たい水を浴びると体は体温を保とうとして、“褐色脂肪組織”と呼ばれる熱を作る脂肪が活性化されるのだそう。この過程でミトコンドリアが新しく作られやすくなるとされているみたい。(*23)
東北大学の研究では、寒冷刺激によって白色脂肪組織のなかに「ベージュ脂肪細胞」が現れ、ミトコンドリアが豊富な熱産生細胞へと変化することが確認されている(2024年、東北大学プレスリリース)。 (*9.10)
シャワーの最後に30秒〜1分、冷水を浴びるところから始めるのがおすすめ
首・わきの下・鼠蹊部(足の付け根)などの大血管近くを重点的に充てる
※ 心臓疾患のある方、高血圧の方は医師に確認を。
② サウナ(熱ショックタンパク質の活性化)
高温の環境に入ると「ヒートショックプロテイン(熱で傷んだタンパク質を修復してくれる物質)」が増えて、ミトコンドリアのダメージ回復を助けてくれるのだとか。フィンランドの研究では、週4回以上サウナに入る人は心臓病リスクが下がるとも報告されている。(*17)
80〜90℃のサウナに10〜15分入り、外気浴で休憩するサイクルを2〜3セット
③ サウナ×コールドの温冷交互浴
サウナ後に水風呂(または冷水シャワー)に入る「温冷交互浴」は、血管の拡張・収縮を繰り返し、ミトコンドリアへの酸素・栄養供給を最大化する効果があるとされる。あの「ととのう」感覚は、副交感神経が優位になってミトコンドリアの回復にもいい状態みたい 。
▶メンタル編
① 腹式深呼吸・横隔膜呼吸
ゆっくり深く息を吸うことで全身の血流が良くなり、ミトコンドリアに効率よく酸素が届くようになるのだそう。さらに副交感神経が優位になることで、慢性ストレスで増えがちなコルチゾール(ストレスホルモン)が抑えられ、ミトコンドリアへのダメージも減る。
1日3回、4秒吸って7秒止めて8秒吐く「4-7-8呼吸法」などを実践
② 背伸び・軽いストレッチ
ストレッチで筋肉を伸ばすと血流が改善され、ミトコンドリアに酸素と栄養が届きやすくなるのだそう。特に長時間デスクに座っていると筋肉が縮んで血流が悪くなりがちなので、こまめな背伸びがじわじわ効いてくるんだとか。
肩甲骨まわし・体側伸ばし・股関節ストレッチを1回30秒ずつ
③ 瞑想・マインドフルネス(慢性ストレスを減らす)
慢性的なストレスはミトコンドリアを傷つける活性酸素を増やしてしまう。UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)のEpel先生らの研究(Ann NY Acad Sci, 2009)では、瞑想によってストレスホルモンを落ち着かせることが細胞老化のスピードを緩める可能性が報告されている。(*16)
1日5〜10分のマインドフルネス瞑想から始めてみて
ミトコンドリアが増えると起こる変化は? 増えたと感じるサイン
ミトコンドリアの数を血液検査で直接測るのは一般的ではないけれど、「増えてきたかも?」と感じられる体の変化はあるのだそう。増えたかどうかの判断基準にもなるので、ぜひ参考にしてみて。
ミトコンドリア活性化のサインリスト
● 朝の目覚めがすっきりしてきた(エネルギー産生の改善)
● 運動後の疲れが回復しやすくなった(ATP産生効率アップ)
● 体がポカポカしやすくなった、冷えが改善された(熱産生機能の向上)
● 集中力が続くようになった(脳へのエネルギー供給安定)
● 肌のくすみが減り、透明感が増してきた(細胞の酸化ストレス軽減)
● 空腹時間があっても以前ほどひどい倦怠感がない(脂質代謝の改善)
● 同じ運動をしても息切れしにくくなった(ミトコンドリア密度アップ)
● 体温が36.5℃以上の日が増えた(基礎代謝向上のサイン)
※ 体感には個人差があります。あくまで参考指標として活用してください。
医者に聞いた「最短で増やすなら何をやる?」
・最短でミトコンドリアを増やすとしたら、何をやる?
「一番エビデンスが強くて、即効性があるのはHIIT(高強度インターバルトレーニング)です。たった1回のHIITを行うだけで、ミトコンドリアの生合成スイッチであるPGC-1αが運動後3時間以内に核内に移行し、ミトコンドリア関連遺伝子の発現が始まることが確認されています。HIITの1回の実施によってPGC-1αの核内移行が誘発され、ミトコンドリア遺伝子のmRNA発現上昇が3時間以内に確認されており、24時間後にはミトコンドリアタンパク質量の増加も認められています。(*18)
もちろんHIITだけが答えではなく、HIITと筋トレを週2〜3回組み合わせながら、食事・睡眠・断食(オートファジー活性化)を並行して整えることが最速の近道だと思います」
・特に女性が意識すべきポイントは?
「女性にとって、エストロゲンとミトコンドリアの深い関係を知っておくことが重要です。エストロゲン(特に17β-エストラジオール)はミトコンドリアの受容体に直接作用し、ミトコンドリアの生合成・増殖・酸化能力を高めることが明らかになっています。(*19)17β-エストラジオールはミトコンドリア内の複数のタンパク質(複合体Ⅰ・Ⅳ・Ⅴなど)の活性と発現を高め、骨格筋のミトコンドリア生合成・増殖・酸化能力を促進することが示されています。
つまり閉経前後でエストロゲンが低下するタイミングは、ミトコンドリアが一番ダメージを受けやすい時期でもあります。閉経によるエストラジオールの低下は、ミトコンドリア生合成の減少・脂質プロファイルの悪化・体脂肪分布の変化・心血管疾患リスクの上昇と関連しており、エストロゲンはミトコンドリア生合成を高めることで心臓保護的に作用することが報告されています。(*20)
そのため30代後半〜40代の女性こそ、今すぐ運動習慣を作ることが大切です。特にこの世代は有酸素運動+筋トレの組み合わせで、エストロゲン低下に先手を打ってミトコンドリアを増やしておくことが、その後の健康寿命に大きく影響すると考えています」
・よくある誤解や「やりがちなNG」はある?
「一番多い誤解は“抗酸化サプリを大量に摂れば、ミトコンドリアが守られる”という考え方です。これは逆効果になることがあります。
運動によって発生する活性酸素(ROS)は、実はミトコンドリアを増やすシグナルとして必要なんです。運動によって生じる活性酸素はミトコンドリア生合成・血管新生・筋肥大などのトレーニング適応に不可欠なシグナルであり、高用量の抗酸化サプリメント(特にビタミンC・E)を運動直前・直後に摂取すると、このシグナル伝達が減弱し、トレーニングによる適応効果が損なわれる可能性があることが示されています。(*21)
もうひとつのNGは毎日ハードにやりすぎること。HIITや断食は強力な刺激ですが、回復の時間がないと逆に慢性炎症を起こしてミトコンドリアを傷つけます。刺激と回復を交互に設計することが、最短で増やすための本質だと思います」
よくあるQ&A
Q1. どのくらいでミトコンドリアは増える?
A. 有酸素運動を始めた場合、早ければ2〜4週間ほどで筋細胞のなかのミトコンドリア密度が上がってくるという研究報告がある。信州大学のインターバル速歩の研究では、5ヶ月間継続で体力が平均20%向上するというデータも。焦らず2〜3ヶ月スパンで自分の変化を観察していくのがおすすめ。(*7)
Q2. やりすぎはNG? 過剰な運動や断食の危険性は?
A. ミトコンドリアを増やそうと「毎日ハードなHIIT+長時間断食+コールドシャワー」を同時にやりすぎると、逆に活性酸素が大量発生してミトコンドリアを傷つけてしまうことも。オーバートレーニングは慢性疲労・免疫低下にもつながるため、ハード系の刺激は週2〜3回までにして、回復日を設けることが鉄則。
Q3. 何歳から始めてもミトコンドリアは増える?
A. 増える。Mayo Clinicの研究では、65〜80歳の方でもHIITや有酸素運動を始めることでミトコンドリアのタンパク質が増加することが確認されている(Robinson et al., Cell Metabolism, 2017)。ただし若い世代に比べると反応がゆっくりな場合もあるので、無理のない強度から始めることが大切。年齢を問わず、「始めるのに遅すぎる」ことはない。(*15.6.7)
Q4. サプリメント(機能性表示食品など)だけで増やすことは可能?
A. CoQ10・α-リポ酸・L-カルニチン・NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)など、ミトコンドリアへの関わりが研究されているサプリはあるみたい。ただ厚生労働省eJIMでも「抗酸化サプリが疾患に良い影響を与えるという確固たる科学的根拠は得られていない」と指摘されているんだそう。まずは運動・食事・睡眠という生活習慣を整えてから、そのプラスαとして使うのが現実的なアプローチかも。(*5)
エディターが2週間試してみた体験記
「ミトコンドリアを増やす!」と言葉にすると少し大げさに聞こえるけれど、やることは意外と地味だった。特別な器具も、高いサプリも、極端な食事制限も必要ない。
今回は5つの習慣を2週間、できる範囲でやってみることに。果たしてその結果は......?
<行ったこと>
① 筋トレ(スクワット+レジスタンスバンド)
下半身を中心に、スクワット15回×3セットとレジスタンスバンドを使ったヒップアブダクションを週3回行った。“お尻を鍛えると代謝が上がる”と頭ではわかっていても、翌日の筋肉痛は容赦なかった。「でも痛みがあるということは、ちゃんと刺激が入っている証拠!」そう言い聞かせて続けた。スクワットに飽きた日はトランポリンや踏み台昇降、立ち腹筋など、きついけど楽しい運動をチョイス。続けることを大切にした。
② 緑茶を中心に飲む
もともと水を飲むことが多かったけれど、午前中だけ緑茶に切り替えた。これが5つのなかで一番ハードルが低かったかも。気づいたらすんなり習慣になっていた。
③ 間食と夜遅い食事を減らす(プチ断食)
最初に16時間断食を1回試みたけれど、なかなか空腹を抑えられず、頭がぼんやりして仕事にならなかったので一旦断念。“夜21時以降は食べない・間食をやめる”という緩めのルールに切り替えて再度トライすることに。
これなら無理なく続けられ、ストレスもかからなかった。
④ コールドシャワー(首から30秒)
シャワーの最後に、首に冷水を30秒だけ当てるスタイル。これが一番慣れるまでに時間がかかってきつかったかも。いつも最初の数秒は冷たさに思わず声が出そうになる。けれど終わった後のシャキッとした感覚が心地よく、じわじわとクセになっていった。本当は朝に行う方が一日爽やかに過ごせそうだけれど、夏以外は寒くて冷水シャワーは避けたいので、私は夜のお風呂上がりに取り入れることが多かった。湯船で温まったあとに行うことで、ちょっとした温冷交代浴感もありよかった。
⑤腹式深呼吸「4-7-8呼吸法」
4秒吸って、7秒止めて、8秒かけて吐く。この呼吸法はとてもシンプルだけれど、今まで意識して呼吸をする習慣がなかった私には少し不思議な感覚だった。私は朝と夜、寝る前に3回ずつ行うのを習慣に。
たった数分なのに、終わった後は自然と体の力が抜けてリラックスした気分に。呼吸だけなのに、その後の動作まで少し軽く感じられる日もあった。ちなみに、日中はデスクワークの合間に背伸びも行うよう心がけた。
その他にも、できる日は“なるべく24時前に寝る”ことを意識して過ごした。
<変化はあった?>
2週間で一番驚いたのは、意外にも肌だった。くすみが減ってツヤっとした感覚は、気のせいかと思って何度も鏡を見返したほど。スコアをつけたら自然と5点満点中4.5になった。筋トレで血流が改善したのか、間食をやめたことで血糖の乱高下が減ったのか、睡眠なのか、理由は正直わからない。でも何かが変わったのは確かだった。
また朝の目覚めと日中のエネルギーレベルも変わった気がする。以前はアラームを止めてからしばらくはぼーっとすることも多かったけれど、2週目あたりからすんなり起きられるどころか、アラーム前に起きることもしばしば。そして予定を沢山詰め込んで移動が多い日もアクティブでいられたのは、筋トレを続けた成果かもしれない。
一方で、集中力や冷えの改善、体温の変化はあまり実感できなかった。仕事が立て込んでいた時期と重なったこともあるけれど、これらはもう少し長いスパンで試さないと変化が出にくいのかも。
<2週間行った感想>
“ミトコンドリアを増やすこと”は、劇的な変化を体験できるものではなかったけれど、2週間続けた結果として「なんか調子がいいかも」という感覚が積み重なっていったのは事実。
コールドシャワーの効果は一日の疲労や運動でのダメージをケアしてくれた感じがするし、断念した16時間断食は、この調子でいけばいつかできるようになる予感がする。
細胞レベルの変化は目に見えないけれど、なによりこの2週間の過ごし方は、自分の体が喜んでいるような気がした。あとは無理なく続けること。次は他の“ミトコンドリアを増やす方法”も挑戦してみようかな。
まとめ
完璧にすべてをやる必要はない。まずは「インターバルウォーキング」「コールドシャワー30秒」「朝ごはんを少し遅らせるプチ断食」など、取り入れやすいものから始めてみよう。続けることが何より大切。細胞レベルから変わっていく体の変化を楽しんで。
※ハースト婦人画報社は生成AIの活用について開示を行っています。本記事は生成AIにより作成されたコンテンツを含みます。
記事を監修していただいたのは......
鈴木 鑑(すずきかん)先生
2003年に東京慈恵会医科大学医学部卒業。泌尿器科専門医として大学病院・総合病院で診療および手術に従事した後、内科・皮膚科・泌尿器科領域まで診療を広げ、全身の健康管理を重視した医療に取り組む。自費診療クリニックでは副院長・院長を歴任し、メンズヘルス、再生医療、オーダーメイド医療に携わる。2024年にTokyo Capital Clinicを開院。分子栄養学やバイオテクノロジーの知見を取り入れ、科学的な検査に基づく個別最適化医療とウェルネス支援を行っている。公式HP
※ 本記事は医療行為を推奨するものではありません。持病のある方や妊娠中の方は、新しい習慣を始める前に医師にご相談ください。
【参考文献一覧】
▼ 国内(厚生労働省・大学公式プレスリリース)
1. 厚生労働省 e-ヘルスネット「有酸素性エネルギー代謝」
4. 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(PDF)
6. 信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室「インターバル速歩効果の未来予測プログラムを開発」(2025)
7. 信州大学 研究ハイライト「インターバル速歩で健康寿命を延ばす!骨密度の向上効果を実証」(2025)
8. 九州大学「ミトコンドリアを介した褐色脂肪細胞の自己活性化・脂肪燃焼メカニズムを発見」
9. 東北大学大学院医学系研究科「エピゲノム変化が脂肪のエネルギー消費を促進し肥満を防ぐ」(2024)
10. 東京大学先端科学技術研究センター「脂肪燃焼体質を作るには、寒さの感知とエピゲノムの変化が重要」(2018)
11. 東京科学大学(旧・東京工業大学)大隅良典栄誉教授 ノーベル賞特設ページ
12. 東工大ニュース「オートファジー-ノーベル賞を受賞した大隅栄誉教授の研究とは」(2016)
▼ 海外学術論文(PubMed Central)
13. Tomas C, Brown A, Strassheim V, et al. PLoS ONE 12(10): e0186802 (2017)
14. Mouchiroud L, Houtkooper RH, Moullan N, et al. Cell 154(2): 430-441 (2013)
15. Robinson MM, Dasari S, Konopka AR, et al. Cell Metab 25(3): 581-592 (2017)
16. Epel E, Daubenmier J, Moskowitz JT, et al. Ann N Y Acad Sci 1172: 34-53 (2009)
17. Laukkanen T, Khan H, Zaccardi F, Laukkanen JA. JAMA Intern Med 175(4): 542-548 (2015) サウナ週4回以上で心疾患死亡リスク低下(フィンランド2,315名追跡研究)
▼ 医師取材パート関連論文(PubMed Central)
18. Little JP, Safdar A, Bishop D, Tarnopolsky MA, Gibala MJ. Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol 300(6): R1303-R1310 (2011) ― HIIT1回でPGC-1αが核内移行・ミトコンドリア生合成が活性化
19. Klinge CM. Redox Biol 31: 101435 (2020) ― エストロゲンによるミトコンドリア機能制御のレビュー(骨格筋の生合成・増殖・酸化能力への作用を含む)
20. Renke G, Kemen E, Scalabrin P, et al. Curr Cardiol Rev 19(5): e060223213895 (2023) ― 閉経後のE2低下とミトコンドリア生合成・心血管リスクの関連
21. Braakhuis AJ, et al. Antioxidants (Basel) 15(4): 456 (2025) ― 高用量ビタミンC・Eがミトコンドリア適応シグナルを減弱させる可能性
22. Longo VD, Di Tano M, Mattson MP, Guidi N. Nat Aging 1: 47-59 (2021) ― 断続的・周期的断食と寿命・健康寿命・疾患リスクに関するレビュー(酵母〜ヒト)
23. Joo CH, Allan R, Drust B, et al. Eur J Appl Physiol 116(7): 1341-1352 (2016) ― 冷水浴(受動的・運動後)がヒト骨格筋のPGC-1α・VEGF mRNA発現を増加





















