「白髪を抜くと増える」と耳にしたことがある人も多いのでは。抜くと増えるというのは本当なのか。また、白髪の対処法として正解は何なのか。白髪にまつわる素朴な疑問を形成外科医・美容外科医の前島ネイト先生に取材した。

<監修>前島ネイト:形成外科・美容外科医師・「Secret Garden Clinic」院長


白髪は抜くと増えるって本当?

前島先生に聞いてみると、「白髪を抜くと白髪が増えるというのは、完全に嘘です。迷信ですね」とバッサリ。「抜くと白髪が増えるということはありませんが、白髪を抜くのはやめた方がいいですね。毛が薄くなる可能性もありますよ」とのことだった。

Read Next

白髪を抜くのはNG!その理由とは

前島先生によれば、毛が薄くなるという以外にも白髪を抜かないほうがいい理由は多いという。何がいけないのか、詳しく聞いてみた。

・頭皮や毛根へのダメージ
・次に生える毛への影響
・感染症の原因にも

「白髪を抜くことは、頭皮や毛根のダメージになります。白髪は色が白いだけで元気に生えている毛なので、その毛を無理に抜くことは毛根から引きちぎっているということ。頭皮や毛根に傷を与えてしまいます。

毛根には生える周期があるので、無理に抜くことでその周期を乱すことになります。次に生えてくる毛の周期が乱れることで、健康的な毛が育つことの邪魔をしてしまうのです。また、同じ個所の毛を繰り返し抜いてしまうと、最終的には髪が生えなくなってしまいます。全体の10%くらいの髪の毛が白髪になってきたら、抜くことはもう物理的に無理になってくるでしょう。
健康な髪を無理やり引っこ抜くのは、頭皮や毛根に傷をつける行為のため、稀に細菌感染症を起こすこともあります。自ら頭皮にケガをさせているイメージです」


白髪を見つけた時の正しい対処

髪のためには、白髪を抜いてはいけないことがわかった。では、白髪を見つけたときはどうしたらいいのか。正しい対処法をネイト先生に教わった。

白髪 抜く
shironagasukujira//Getty Images


【1】白髪をはさみで切る

「白髪は抜くのではなく、はさみで切りましょう。これなら頭皮や毛根にダメージを与えません」

【2】白髪を染める

「白髪を隠したいなら、染める方法もありますね。ただし、薬剤ヘアカラーは髪や頭皮のダメージにもなるので気をつけましょう。日本ではまだあまり浸透していませんが、欧米ではタバコの害と同じくらい、ヘアカラーの害について意識され、理解した上で使用されています。ヘアカラーは、髪のキューティクルを科学薬剤によって一度開いて、そこに化学染料を入れるという仕組み。非常に強い薬なので染毛中に頭皮がピリピリするという人も多いのではないでしょうか。化学薬品を使わずに白髪を染めたいという人におすすめなのは、天然植物100%で頭皮にダメージを与えにくいヘナ染めです。私自身もヘナを使っていますが、とても快適に白髪を染められています」

医師も実践しているヘナカラーでの白髪染め方法

ヘナペーストを作る

ヘナカラー 白髪染め

まずはヘナの準備から。ヘナの粉を、マヨネーズくらいのかたさを目安にぬるま湯で溶く。首元にタオルを巻き、ケープを使用する。自宅ではバスタオルなどで代用するか、黒っぽい前開きの服ならヘナがついても目立たないのでおすすめだ。ヘナは素手でも対応可能だが、今回はビニール手袋をつけて行う。

    塗布する

    ヘナカラー 白髪染め

    手にヘナを取り、髪に塗る。ハケを使ってもOK。化学染料と違って、地肌についても安心感があるのが心地いい。

    しばらく放置する

    ヘナカラー 白髪染め

    襟足や顔まわりなどはペーパータオルで押さえて、液ダレを防ぐ。ペーパータオルの上からタオルを巻けばOKだ。

    ヘナを洗い流す

    1時間程度待って、洗い流す。

    髪を乾かす

    ヘナカラー 白髪染め

    白髪部分が、オレンジ色に染まる。ヘナ100%のオレンジだけでも、繰り返すうちによりオレンジ色が深まり、髪に馴染むという。この写真は、週に1度の「オレンジ」を1カ月繰り返したもの。もっと黒髪に近づけたい場合は、インディゴ染料の入ったヘナカラーを重ねるといいそうだ。

    【3】白髪を隠す

    一部だけ染めたい、数本だけ気になる、という人は、白髪を隠すアイテムを活用するのも手。顔に塗るファンデーションのように、パフにとって白髪にポンポンとのせて色をなじませるタイプや、スティックタイプで白髪に塗れるもの、まつ毛用のマスカラのようにブラシで色を塗れるものなどもある。


    白髪の原因とは

    白髪 抜く
    nensuria//Getty Images


    前島先生によれば、白髪の原因はひとつではなく、様々な要素が絡んでいるという。主な原因を見ていこう。


    【白髪の原因1】加齢

    「『年をとると白髪になるのは当然』、そう考えている人は多いかもしれません。実はそうではないということが近年の研究でわかってきています。

    これまでの医学界では、50歳を越えると『50・50・50』と呼ばれるルールがあって、『50歳で50%の人口が髪の毛の半分・50%白髪になる』という風に言われてきたのですが、どうもそうじゃないというのが研究で明らかになってきました。

    日本人の場合、20代から30代の10年間でだいたい人口の10~20%に白髪が部分的に出てきます。30代から40代になるとそれが30~40%に増えてきて、50代になると40~50%の人たちに白髪が出ているというのが現状です。

    50歳を過ぎてもそんなに白髪になっていない、という人がたくさんいます。年を重ねると白髪になる人は増えるものの、加齢=必ず白髪になる、という方程式は成りたたないのです」



    【白髪の原因2】遺伝

    「例えば自分の祖父母や両親がだいたい50代に白髪になったとしたら、自分も同じくらいのタイミングで白髪になるという遺伝的要素は、確かにあります。ありますが、一要因という程度であって、生活環境や食事、心身の状態からの影響の方が大きいと言われています」

    【白髪の原因3】ストレス

    「ストレスは白髪の大きな原因と言えます。ストレスによって自律神経が乱れて交感神経優位になると、ストレスホルモンであるコルチゾールが分泌されます。コルチゾールやアドレナリンなどのホルモンがずっと流れっぱなしになると、毛根のいちばん下のところに炎症を起こしてしまいます。
    また、ストレスは酸化も促進します。髪の色素ができる過程では酸化還元酵素が関わっていますが、ストレスがあるとその分泌が減ってしまい、酸化ストレスが続いた状態となって白髪が出てくるのです」

    【白髪の原因4】栄養不足

    「食事から栄養を摂れているかも関わっています。あまり栄養が入っていないようなファストフードばかりを食べていると、白髪になりやすいと言えるでしょう。特に、髪の色を作る成分であるメラニン色素ができる過程で必要とされるビタミンB12や銅、亜鉛などが不足すると、メラニンを作る化学反応が起きず、白髪になってしまいます」

    【白髪の原因5】タバコ

    「白髪の原因として大きなもののひとつに、タバコがあります。タバコは、喫煙者はもちろん、副流煙でも影響します。煙草による血流の悪化や体内の酸化ダメージにより、髪の毛が白くなるというメカニズムがあります」

    【白髪の原因6】食品添加物

    「タバコと同様に、食品添加物や食品に含まれる防腐剤、保存料なども体内の酸化ダメージに影響があると言われています」


    【白髪の原因7】生活習慣

    「慢性的な睡眠不足や、良質な睡眠が取れていない生活。食事のリズムが乱れていたり、運動不足が続いているなど、不健康なライフスタイルは、当然ながら頭皮や毛根にも悪影響を与えます」

    医師が実践する白髪を増やさないための対策

    白髪 抜く
    Anastasiia Krivenok//Getty Images

     <睡眠>22時までに就寝、日の出とともに起床

    「体の回復期間として非常に重要なのが睡眠です。自分にとってこれぐらい必要だな、という睡眠時間をきちんと取ることが大切ですね。私の場合は22時頃までに寝て、日の出とともに目覚める生活を送っています。同じ8時間睡眠でも、就寝時間によって眠りの質が異なります。睡眠中に行われる体内の修復や回復にも差が出るので、なるべく早い時間に就寝し、質の高い睡眠時間を確保するのかベストだと思います」

     <ストレスケア>運動とサウナでリフレッシュ
    「ストレスケアは、現代人の必須項目と言っていいでしょう。私の場合は、運動と、サウナ&水風呂でストレス解消しています。サウナと水風呂は、心臓血管系にもいいし、自律神経を整える意味でもとてもいい。ストレスがある時は頻繁に行きますが、サウナに行けないときは、自宅でお風呂に浸かってストレスをリセットしています」

     <食事>ビタミンB12、亜鉛、銅を積極的に摂る
    「メラニンを作るための化学反応に使われているビタミンB12や亜鉛、銅などが豊富に含まれるものを食べます。海藻類は豊富なので、海苔や昆布は常備していますね。ほうれん草などの青野菜も欠かせません。『インターミッテントファスティング(16時間断食)』で空腹時間を作ることも意識しています。この空腹時間により『オートファジー』といって古くなったタンパク質や傷んだ細胞小器官をリサイクルし、新たな細胞成分の材料として再利用する作用が働き、老化防止や病気のリスク軽減に役立つと期待されています。これも白髪を防ぐことにつながっていると思います」

     <運動>筋トレで血流を改善

    「週に2~3回、運動しています。ウェイトを持ったり、自重での筋トレですね。『運動すれば白髪が治る』というわけではないのですが、運動によって血流がよくなり、代謝が改善することによって髪の毛が増えたり、白髪が黒髪に戻ったりということもあります。運動はストレスの軽減になるので、それも大きなメリットですね」

    <ヘアケア>薬剤ヘアカラーはしない

    「これといってヘアケアはしていないのですが、ヘアカラーには気をつけています。薬剤ヘアカラーは髪や頭皮にダメージを与え白髪の原因にもなるため、使いません。白髪が気になるときは、オーガニックの粉末100%のヘナを使って白髪を染めています」

    白髪を抜くより慈しむ。白髪とポジティブに向き合うセルフケア法とは?

    鏡の中に白髪を見つけた瞬間、つい手が伸びてしまうのは誰にでもある衝動だ。けれど、無理に引き抜くことは、髪を生み出す大切な土壌(頭皮)にダメージを与えるだけ。これからは「抜いて消す」のではなく、今の自分を美しく見せるための「向き合い方」にシフトしてみては。

    頭皮の「SOS」に耳を傾ける

    白髪は、血流不足や栄養の偏り、あるいはストレスが蓄積しているサインかもしれない。抜いて終わらせるのではなく、「最近、自分を労わってあげられていたかな?」と振り返るきっかけにしよう。

    「隠す」から「活かす」デザインへ

    白髪をあえて活かした「ハイライト」や「バレイヤージュ」といったカラーリング方法もある。真っ黒に染め上げるよりも、立体感が出て洗練された印象を与えてくれるものも。隠すことばかりではなく、活かすデザインにも目を向けてみるもも一案だ。

    ブラッシングで「未来の髪」を育てる

    抜きたくなる気持ちをグッとこらえ、パドルブラシで頭皮を優しく刺激してみて。血行が促進され、次に生えてくる髪に栄養を届ける準備が整う。

      白髪は、あなたが今日まで懸命に生きてきた証。それを否定するのではなく、今のライフスタイルに合わせたケアを取り入れることで、髪への自信はもっと深まっていくはずだ。

      白髪について素朴なQ&A

      Q.白髪は黒く戻ることはある?

      「白髪が黒く戻ることはあります。『可逆的白髪』と言い、関連した論文も多く出ています。例えば、白髪の原因としてストレスが大きい場合。子育て中、とくに授乳中など、短期間で白髪になってしまったときに、そのストレスを是正することで黒髪に戻ったり、仕事にストレスを抱えていた人が、仕事を辞めたら黒髪に戻ったケースなど。白髪の原因を改めることで黒髪に戻る可能性は十分あります」

      Q.日本人は白髪になりやすい?

      「日本人は比較的白髪の少ない人種です。もっとも白髪の率が高いのが白人で、全人種の中で、黒人がいちばん白髪になりにくいと言われています。これは皮膚と同じく、メラニンが関係していると言われています」

      Q.白髪を抜く、染める以外の方法はある?

      「白髪を染めずにグレイヘアを楽しむという人も増えていますね。黒髪と白髪がきれいに混ざっている人を見ると素敵だと思います。そのスタイルにトライしてみるのは、抜くよりずっといいですね」と前島先生。隠すことだけを考えずに美しく表現するのもひとつの選択肢だ。

      まとめ:白髪を改善したいなら生活習慣を見直そう

      白髪 抜く
      Alexandr Kolesnikov//Getty Images

      白髪の原因はさまざまな要素が複合的に絡み合っている。白髪も体の一部。白髪を減らしたいなら、健康的な生活習慣の実践が何よりの近道かも。

      監修者:
      前島ネイト 形成外科・美容外科医師・「Secret Garden Clinic」院長

      前島ネイト 医師 白髪抜く対策原因
      Akio Maeshima

      幼少期から器械体操選手として体と向き合い、柔道、ボディビル、ヨガ、ダンスなど多彩な身体技法にも親しむ。アメリカで学び、日本で形成外科・美容形成外科医としてキャリアを重ね、科学的な医療の強みを活かしつつ、再生医療・栄養学・レイキヒーリングなどを融合し、「心・身体・魂」を一体として整えるホリスティックな医療モデルを確立。2025年「Secret Garden Clinic」を開院。NHK「みんなで筋肉体操」などでモデルやタレントとしても活躍。日本形成外科学会正会員。Instagram:@dr.neito